見えない会計

 身体が資本の職業なので、時々江古田の鍼灸院に通っている。先日は早めの時間帯に江古田に着いたので、久しぶりに古書店に立ち寄った。以前に来た時は、気に入った画集や写真集が500円ほどで買えた記憶がある。

 軒先の特売コーナーには、食器や雑貨も有り、ルパン三世のマグカップがオールキャラクター揃っていて、少し惹かれたが、食器は収納スペースの関係で余程の事が無い限り買わない方針なので、見送った。ブルトン「ナジャ」の装丁がめちゃくちゃカッコ良くて、即ジャケ買い決定した。丁寧に見ていくと、同じ本で別装丁のものも有った。翻訳の違いにも興味があり、最初の方だけ少し読んでみたが、買うのは当然一目惚れした方だ。端の方まで見ると、買う予定と同じ装丁のものがもう一冊あり、チェックすると少し状態が悪く、最初のものに決定。その他合計4冊を購入することにした。

 ただ、支払いをしたいのに、店主も会計エリアも見当たらない。以前に来た時は、天井まで届く本の山の真ん中に通路があり、その奥で会計したはずだ。今日はその通路の奥の部分にも本がうず高く積み上げられ、人が居られる空間は無い。でも、記憶の面でも、眼前の光景からしても、この空間しか会計をする場所は無い。謎に包まれたまま、でも、本能的にやっぱここしか無い、と思ったのか、気付いたら「すいませーん」と声を出していた。次の瞬間、目の前の見上げるほど高く立ちはだかる本の壁上部50センチ程の空間から、ニョキっと足が出てきて、脚立をつたって店主が降りてきた。「やっぱここだった!」という気持ちと、「そういうことだったのか…!」という気持ちが両方湧き上がった。

 店主は親切に、「ナジャ」の別装丁が有ること、また同じ装丁で状態が悪くても良ければそちらの方が安いことを教えてくれた。

 江古田に来られた際はぜひ立ち寄ってみてください。

根元(コンゲン)書房日芸前店

Write a Reply or Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です