二代目はリサイクル

 今のマンションに引っ越した年に近くのサイクルあさひで自転車を買った。母が亡くなったばかりの時期で、いい天気と陽気とは裏腹に、不安定な気持ちで自転車を漕いで帰ってきた記憶がある。

 使用頻度にもよるが、自転車を10年乗る人の割合は少ないようだ。途中、多少の修理をしながら、この自転車も10年使うことが出来た。少し前に、オリンピックの自転車修理担当の人が、次にパンクしたら買い替えた方がいいだろうという見解だったので、そのつもりでいた。オリンピックは自転車を扱うのをやめてしまったので、サイクルあさひに持っていき、現在のラインナップや選び方のポイントを教えてもらった。かなり真面目な人で、丁寧に教えてくれたので、少し申し訳ない気持ちだったが結局その日は買わなかった。というのも、自転車の値段が10年前の3倍近くになっていたからだ。世界情勢の変化やコロナを挟んでほとんどの物が値上がりしているので、多少なら仕方ないが、さすがにママチャリに3万も払うことになろうとは思っていなかった。とりあえず、近所のスーパーなどに行く時しか使っていない状況だったので、少し時間をかけてどうしようか検討したところ、芸人さんのブログから中野区のシルバー人材センターがリサイクル自転車販売抽選会をやっている情報を掴んだ。残念ながら在住区ではやっていなかったが、中野区なら可能な範囲だ。抽選会は一ヶ月に一度なので、しばらくは自転車無しでどうにか過ごした。

 当日は幸い雨も降らず、西武新宿線で沼袋から歩いて行った。希望の自転車のアタリを付けておき、抽選で引いた番号札順に買って帰れるシステムだった。自転車は20台ほど、そのうち自分の目当ての変速無しタイプは半分ぐらい、40人ぐらいは来ていて、引いた番号が33番だった。できれば27インチが欲しくて1台しかなかったので、かなり望み薄ではあったが、幸い私より年配で小柄な人が多かったので、その自転車はしばらく残っていた。だが、ひょろっとした中学生ぐらいの男の子がお母さんと一緒に自転車が置いてある部屋の中に入って行ったのを見た時に、直感的に「あの子に取られる…!」と思った。ドンピシャだった。

 ただ、諦めて早々に帰ってしまう人の割合も結構多く、自分の番が回ってきた時も、変速無し自転車は2台残っていた。全く同じロゴが書かれた黒い自転車が2台残っていて、これも縁だろうと思い、カゴが大きい方を選んで購入した。帰りはもちろん自転車に乗って帰ってきたが、26インチでもそんなに漕ぎ辛さは感じなくてホッとした。そして何より、気持ちの面でフラつく部分が無く、しっかりとした自分を感じたことが嬉しかった。

サイクルあさひの人に、黒い自転車だと見つけにくいと言ったところ、一番簡単なのはステッカーを貼ってカスタマイズすることだと教えてもらった。ワタリウムのオンサンデーズの個展に伺った際に写真家の田島一成氏より戴いたステッカーがタイムリーで黒い車体にピッタリだったので決定。

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